赤鼻テングは、うちわをハタハタさせて風をおこすと、山こえ、谷こえ、川をこえ、鳥よりも速く空をかけました。ごさくがそっと細目をあけて下を見ると、白い雲がビュンビュン流れていきます。その雲の間から真っ青な琵琶湖が見え、その湖の上に竹生島がぽっかりと浮かんでいるのも見えました。
ごさくは怖くて、思わず赤鼻テングにギュウとしがみつきました。すると赤鼻テングはジロッとごさくを見て、
「目をあけたな。目をあけると落とすぞォ、落とすぞォ。」
と言って急降下したり、急上昇したりしてごさくをおどかすのです。ごさくはあわててもう一度しっかり目を閉じると、恐怖にぶるぶる震えながら、
「テングさん、テングさん、はやくどこかへ降ろしてください。」と頼みました。