驚いたごさくがその場にペタリと座り込むと、赤鼻テングは熊笹をかき分けて出てきて、ヤツデの葉のようなうちわをヒラヒラさせながら言いました。
「ごさく、どうじゃ、わしと一緒にこんか。今日は長浜の祭だから見物につれていってやろう。」
ごさくはワナワナ震え、無言でこくこく頷くと、赤鼻テングはまんぞくげにうなづいて、
「それじゃ、わしの体にしっかりつかまれ。よいというまでは、どんなことがあっても、目をあけてはならんぞ。」
と言いました。そしてごさくをわきに抱きかかえ、天に向かってうちわをひとふりし、雲を呼ぶと、それにポイと飛び乗りました。