伝平 おおーい。
全員 な、なんや、これは!
全員 うわああっ。
〈男衆、みんなで松の木の下の草むらから、血に染まった大きな狐の死体を取り出す。伝平は木から降りてくる。〉
男1 伝平どん、お前、狐に化かされたんか!
伝平 いや、違う。わしのお母が死んだと言うて、きつねに化かされそうになったんやけど、わしはそれを見破って斬り落としたんや。
全員 …なんとお前、ようやったのう
男1 よう、だまされなんだ。お前の勇気はたいしたもんや!
男2 ほんまや。お前は弘川一の若者や!
このことがあってから、伝平どんの勇気と男ぶりは、村の人々に長く語り継がれるようになりました。