管理番号 | 273 | |||
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質問 Question |
NHKのアニメ「忍たま乱太郎」で登場する、「矢羽音」という暗号は、甲賀忍者の間で使われていたのでしょうか。 そして、矢羽音が実在したとして、実際はどのように使用されていたのですか。 |
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回答 Answer |
「矢羽音」という暗号が甲賀忍者の間で使われていたことを示す資料は見つけられませんでした。 著者より、「創作・造語ではない」が、との回答を得たため、「矢羽音」という言葉は存在するようですが、「本来の「矢羽音」という言葉の意味を忍者の世界で派生させたものかもしれない」との回答も得ており、表現そのものが、実際に使われていた様子を表しているかについては不明です。 |
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回答プロセス |
インターネット検索により、「矢羽音」の記述が、『落第忍者乱太郎』第4巻 43ページに記載されていることが判明。 当館資料『落第忍者乱太郎』の該当ページを確認 コミック上の表現であるが、「シュッ・ヒュッといった音がする」「忍者が連絡を取り合っている音」「暗号のようなもの」というセリフが書かれている。 上記を元に、「矢羽音」に加え、「忍者の連絡方法」「忍者の暗号」「シュッ・ヒュッといった音が出る忍者の道具」をキーワードとして調査を行った。 『完本 万川集海』 藤林 保武 中島篤巳/訳註 国書刊行会 →「矢羽音」の記述なし ・暗号・合図・合言葉・矢を使った連絡方法についての記述あり。 ・音を使った連絡方法は、ほら貝の吹き方などの記述あり 『正忍記』 藤一水子 正武/著 中島篤巳/解読・解説 →「矢羽音」の記述なし 『完本 忍秘伝』 →「矢羽音」の記述なし ・暗号・合図・合言葉・矢を使った連絡方法についての記述あり。 ・音を使った連絡方法は、ほら貝の吹き方などの記述あり 『忍者学大全』 →「矢羽音」の記述なし ・暗号・合図・合言葉・矢を使った連絡方法についての記述あり。 ・音を使った連絡方法は、ほら貝の吹き方などの記述あり くすり学習館の長峰氏(元歴文化財課課長・忍術村資料館勤務経験者)に聞き取り →「矢羽音」についての記憶なし ・矢を使った連絡方法(矢文・鏑矢)を忍者が使っていた記録はある ・ほら貝など音を使った暗号のような連絡・合図の記録はある。 ・『落第忍者乱太郎』に掲載されている「矢羽音」のような暗号については、存在の可能性は否定できないが、存在を確認できる根拠資料はわからないとの回答を得る。 歴史文化財課の福島氏(国際忍者学会会員)に聞き取り →「矢羽音」について、尼子騒兵衛氏著作の記述は認知しているが、実際に調べてはいない。 ・奥瀬平七郎氏、戸部新十郎氏、名和弓雄氏など昭和の研究者の著書に出てくるのではないか。 ・『万川集海』『正忍記』『忍秘伝』など、江戸時代に成立した資料の中に「矢羽音」という忍術は出てこない。 朝日新聞社編集部に問い合わせ →著者の尼子騒兵衛氏より、下記の回答を得る。 ・「出典を示すことは時間の都合上できない」 ・「50年以上前に読んだ本に記述があった」 ・「創作・造語ではない」 ・「本来の「矢羽音」という言葉の意味を忍者の世界で派生させたものかもしれない」 以上の情報をもって、『落第忍者乱太郎』の連載が始まった1986年以前に出版された、奥瀬平七郎氏、戸部新十郎氏、名和弓雄氏の著作を中心に調査を行った。 『忍者と盗賊』 戸部新十郎/著 河出書房新社 1978年刊 『絵で見る時代考証百科 日本刀・火縄銃・忍びの道具編』 名和弓雄/著 新人物往来社 1983年刊 『忍術処世法』 奥瀬平七郎/著 読売新聞社 1963年刊 『忍術秘伝』 奥瀬平七郎/著 凡凡社 1959年刊 『忍者の生活』 山口正之/著 雄山閣 1981年刊 『概説 忍者・忍術』 山北篤/著 新紀元社 2004年刊 『忍びと忍術』 山口正之/著 雄山閣 2003年 『忍術 その歴史と忍者』 奥瀬平七郎/著 新人物往来社 2011年刊 『忍者と忍術』 戸部新十郎/著 毎日新聞社 1996年刊 『忍者の履歴書』 戸部新十郎/著 朝日新聞社 1989年刊 『忍法皆伝』 上・下 奥瀬平七郎/著 上野市観光協会 1978年刊 いずれも「矢羽音」の記述なし ・暗号・合図・合言葉・矢を使った連絡方法についての記述あり。 ・音を使った連絡方法は、ほら貝の吹き方などの記述あり ・やばねという読みは、「矢羽根」(矢をつがえる部分の羽根)という意味でしか記述がない。 |
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調査に利用したWebサイト(表示できない場合があります) | 現在、登録されているURLはありません | |||
調査に利用した資料 |
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照会先 |
くすり学習館、歴史文化財課、朝日新聞出版編集部
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